しかし、EUがこの動きに同調すれば、アメリカ一極支配が早晩崩壊するであろうことは確かである。
塗り替えられつつある金融世界地図。
サブプライムローン問題が世界の金融界を震え上がらせているさなかに、新しい時代の到来を否応なく人々に思い知らせたもう一つのできごとが起こった。
アラブ産油国やアジアの中央銀行が設立する「SWF」という国営ファンドが存在感を示したのである。
SWFとは、「ソブリン・ウェルス・ファンド」の頭文字をとったものであり、これら諸国の政府が運営する国家ファンドである。
世界最大の金融コングロマリットのCグループは、サブプライムローン問題の損失で深手を負い、二○○七年ニ月二六日に、UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビ投資庁(ADIA)から七五億ドルの出資を受けた。
さらに、二○○七年末には、ADIAから追加出資とシンガポールの政府投資公社(GIC)からの出資と合わせて一四五億ドルの資本の増強に踏み切った。
二○○七年ニ一月、スイスの金融大手UBSもGICやアラブ諸国からニ五億ドルの出資を得た。
Mルリンチは、シンガポール政府が経営するSWFのDマセク・ホールディングから五○億ドルの出資を受けた。
Mガン・スタンレーも二○○七年末にC国投資公司(CIG)から五○億ドルの出資を仰いでいる(N本総研、前掲レポート)。
SWFの具体的な規模は不明であるが、二○○七年の一年間で数倍にはなった模様である。
これまでの国際金融の分野では、新興国といえども、つねに途上国として外野の存在であった。
しかし、サブプライムローンの痛手に苦しむ世界のメガバンクに、新興国が国家資本主義の威力を発揮して、大きな影響力を行使できるようになったのである。
このように、サブプライム問題は、単にアメリカに経済停滞をもたらし、それによって、世界経済を不況に追いやるということ以外に、金融の世界地図を塗り替えつつあるという側面のあることを世界に示した。
このことの世界経済に与える衝撃は巨大なものである。
ただし、急いで付け加えなければならない。
金融の世界地図が塗り替えられるといっても、現代資本主義の宿痛である投機経済が終息したわけではない。
新興国や復活した帝国的ロシア、そして、巨大なカオスをはらむ中国の参入を得て、投機経済の破壊的影響力は強くなるばかりである。
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